今年のプロ野球は「飛ばない」と言われるボールの影響を受けたシーズンとなっている。攻撃面では各選手の打撃成績が低下、ロースコアゲームも目立つ。
また「飛ばない」というワードが話題となっているのはプロ野球界だけに限ったことではない。高校野球では「飛ばない」バットの採用が大きな影響を及ぼし、競技の在り方を根本から考え直すことにもつながるかもしれない。
「(高校野球は)飛ばないバットの導入で野球の質や戦い方が変わった。少ない得点を守り抜く戦い方が主流となり、強豪校ですら勝ち進むのが簡単ではなくなった。公式戦で木製バットを使用する選手が現れるなど、数年前までは考えられなかったことが起きた」(高校野球に詳しいスポーツライター)
今春から反発力の少ない新基準バットが導入されたことで各校の打力は大幅に下がった。今年のセンバツでは大会を通して3本塁打(昨年は12本)、夏の甲子園では7本塁打(昨年は23本)と例年に比べて明らかにその影響が出た。
「野球強豪校は豊富な練習量を誇り、金属バットとはいえ打力はプロ顔負けと言われた。新基準バットの採用で、結果的には打力の差がそこまで出なくなった。各校、1点を大事にする野球の原点に戻った形で好意的に捉える人も多い」(高校野球に詳しいスポーツライター)
本塁打数の激減に戸惑う人もいるが、投手の安全面や負担軽減などを考えると、高校野球では概ね「飛ばない」状況は好意的に受け入れられているようだ。しかし“エンタメ”の要素があるプロ野球では簡単に行かない部分がある。
「プロ野球は多額のお金が動く興行的側面が大きい。本塁打を中心とする長打は野球の華なので、『つまらなくなった』という人が多くなったのも事実」とパ・リーグ球団営業担当者は語る。
今季プロ野球ではオープン戦時から「ボールが飛ばなくなった」という声が聞こえるようになった。NPBは「ボールが変わった事実はない」と否定しているが、公式戦に入るとそういった声はさらに広がりを見せた。