メジャー通算355勝のグレッグ・マダックス(ロイター/アフロ)
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 〇〇がマダックスを達成──。今シーズンは何度もこのような形で報じられ、日本でもすっかりおなじみとなった「マダックス」。これは「先発投手が100球未満で完封すること」を意味する。

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 公式記録ではないものの、この用語はメジャーリーグの公式サイト「MLB.com」でも紹介されていて、生みの親とされているのがベースボールライターのジェイソン・ルークハート。きっかけは今から26年前、高校を卒業したばかりの彼が新聞紙上のボックススコアを眺めていて、お気に入りの選手であったグレッグ・マダックスがわずか99球で完封勝利を挙げたのを知ったことだったという。

 少年時代は球が速くなくとも相手を抑えるタイプの投手だったルークハートが惹かれたのは、人並外れた速球で三振をバンバン取るような豪腕ではなく、自身と同じようにコーナーワークを駆使して打者を手玉に取る技巧派。マダックスもそんなピッチャーだった。

 1986年から2008年までの23年間で歴代8位、20世紀以降に生まれた投手としては、ウォーレン・スパーン(ブレーブスほか)の363勝に次いで右投手最多の通算355勝を記録したマダックスは、引退後は有資格1年目で米野球殿堂入りを果たした大投手である。特筆すべきは1992年から95年にかけての4年間で、まず92年にカブスで20勝を挙げて初の最多勝、FAでブレーブスに移籍した翌93年は2年続けて20勝、防御率2.36で初の最優秀防御率を獲得。選手会ストライキの影響でシーズンが短縮された94、95年はそれぞれ16勝6敗、防御率1.56、19勝2敗、防御率1.63という圧倒的な成績で2年連続3度目の最多勝と3年連続最優秀防御率を手にし、史上初めて4年連続サイ・ヤング賞に輝いた(その後1998年に4度目の最優秀防御率)。

 ただし、マダックスの真価はその安定感、そして耐久性にこそある。カブスで18勝した1988年から、ブレーブスへのFA移籍を経てカブスに復帰した2004年まで17年連続で15勝以上をマーク。翌2005年は13勝に終わるも、シーズン途中でドジャースにトレードされた2006年は15勝、パドレスに移籍した2007年も14勝で、20年連続2ケタ勝利を達成する。これはどちらもメジャー記録となっている。

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マダックスの投手としての“偉大さ”は…