短時間の大雨で急激に事態が悪化する「都市型水害」が増えている。避難の際に心掛ける点は何か。AERA 2024年9月16日号より。
【図表を見る】「滝のような大雨の発生件数が増えている」はこちら
* * *
「今まで経験したことのないような雨でした」
神奈川県平塚市に住む男性(60)は恐怖を語る。
迷走しながら各地に記録的な大雨を降らせた台風10号。平塚市では、9月1日午前7時半までの72時間に降った雨量は427.5ミリと、観測史上最大となった。男性の自宅前の道路は冠水し、隣のアパートは床下浸水した。今まで水害対策をしてこなかったという男性は、こう考えるようになった。
「停電も心配。充電器を買おうと思っています」
ゲリラ豪雨や台風による記録的な大雨で、各地で被害が続出している。
「都市は雨に弱い」
こう語るのは、防災・危機管理アドバイザーで「防災システム研究所」(東京)所長の山村武彦さんだ。地表面がコンクリートやアスファルトで覆われた都市は、雨水が地下に浸透しないため排水能力が低く、側溝や下水道だけが頼りになるという。
「日本の下水道は、1時間に50ミリを基準にして造られていますが、最近は降り始めの10分か20分で50ミリを超えることもあります。そうすると排水能力をオーバーし、雨水が河川に流れずに都市部に氾濫してしまいます」(山村さん)
「滝のような大雨」増加
こうした雨水が排水施設の処理能力を超えて地上に溢れることを「内水氾濫」と呼び、そのリスクは高まっている。
気象庁によれば、「滝のような大雨」とされる1時間に50ミリ以上の雨の、最近10年間(2014~23年)の平均は年約330回と、統計を取り始めた最初の10年間(1976~85年)の年約226回と比べ、約1.5倍に増えた。
山村さんは「都市型水害で一番怖いのは地下への浸水」と話す。99年6月には記録的な豪雨が九州北部を襲い、水が地下に浸水し、福岡市の地下街にいた従業員が死亡した。
「都市部では、行き場を失った水が一気に低いところに流れていく。地下街や地下鉄に通じる入り口などには止水板が設置され、土嚢が積まれたりしていますが、場合によってはそれらを乗り越えます。また、地下の換気口などからも水が入ってくることもあります」(山村さん)