ビシエドは19歳のときに亡命した

「亡命の話は一切しない」

 ふとした疑問がわく。同じキューバ出身の選手でも国から派遣されている形のR.マルティネス、モイネロらと、亡命して国籍を破棄したビシエドとは境遇が違う。互いにどのような感情が芽生えるのだろうか。

 先の球界関係者はこう話す。

「亡命の話は一切しないですね。避けているわけではなく、珍しいことではないからです。個々の選手でいろいろな事情を抱えていることは互いに理解しているので、亡命の一報を聞いても『それは仕方ない』という考え方なのだと思います。日本人が理解するのは難しい感情かもしれません。

 亡命をする理由には、アスリートを取り巻く環境があると思います。米国や日本のほうがトレーニング施設は立派ですし、生活しやすい。でも、政府の意向が絶対なので、オフにはキューバに戻らないといけない。亡命したら行動の制限がなくなって自由になる。ただ、表立ってそれは言えません。キューバに残った家族、親戚に危害が及ぶ恐れがありますから。

 ジャリエルは日本での生活が気に入っていましたし、焼き肉が大好きでした。中日の選手たちにも溶け込んでいましたが、今後の人生を考えて亡命した。『大金が欲しいからだ』と言う人もいますが、事情はもっと複雑です。かばっているわけではないですよ。亡命はキューバ人にとって、非情にデリケートな問題なんです」

R.マルティネスの契約に国情が影響?

 キューバ出身の選手の中で、今オフの去就が注目されるのがR.マルティネスだ。中日は契約延長を望んで交渉するとみられるが、抑えが不安定な球団は多い。交渉の窓口はキューバ政府になる。リナレスを早くから招くなど、キューバと結びつきが深い中日だが、複数球団による争奪戦になる可能性もが十分にあるという。

「キューバ政府と各球団の交渉過程はクローズなので、R.マルティネスの意思がどこまで尊重されるのか、判断が難しい。キューバの経済状況が不安定なことを考えると、各球団が提示する金銭面での条件は大きな材料になる可能性があります」(前出のスポーツ紙デスク)

 野球を、そして日本を愛するキューバ出身選手たちは、様々な事情を抱えている。彼らの活躍を、これからも応援したい。

(今川秀悟)

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