決勝10回裏、京都国際の奥井(左)と西村(撮影/写真映像部・馬場岳人)

 甲子園大会直前に投球フォームを見直した西村は「投げる瞬間まで力を入れない」脱力投法を意識している。指先の感覚だけで投げていたという左腕は、トータルでは「体全体でしっかりと投げること」も意識するようになって、ピッチングが変わったと言う。制球が安定したことで、思い切って腕を振ってチェンジアップを投げられるようになった。

「甲子園で成長している」

 準決勝直後も左腕の進化を実感した奥井は、「西村の素顔」をこう語るのだ。

「何を考えているかわからないというか、天然。理解不能というか、いつもボーっとしています。中学時代から変わらないですね」

 ただ、ひとたびマウンドに立てば頼もしい左腕に変わる。この夏、甲子園を彩った西村のチェンジアップを「相手がわかっていても打てないボール」と称えることを忘れない。

決勝での京都国際・西村一毅投手(撮影/加藤夏子)

 決勝進出を決めて、西村は言った。

「いつも通りに、変なプレッシャーは感じずに挑みたい」

 関東第一との頂上決戦では、タイブレークとなった延長10回裏のマウンドに立った。自らの失策も絡んで内野ゴロの間に1失点。今夏の甲子園で初めてホームを踏まれた。それでも、今春のセンバツ大会でベンチ外だった2年生左腕は、24イニングスを投げて自責点「0」。進化の先で華麗な軌跡を描き、初優勝の瞬間を甲子園のマウンドで迎えた。

(佐々木 亨)

AERAオンライン限定記事

暮らしとモノ班 for promotion
プチプラなのに高見えする腕時計〝チプカシ〟ことチープカシオおすすめ20本