2024年、夏。今年も甲子園で高校球児たちの熱戦が繰り広げられた。第106回全国高校野球選手権大会の名シーン、名勝負を振り返る。今回は、京都国際(京都)の西村一毅投手について。

【感動をもう一度】京都国際の選手たちが繰り広げた熱闘を写真で見る

準々決勝での京都国際・西村一毅投手(撮影/写真映像部・松永卓也)
この記事の写真をすべて見る

*  *  *
 1点すら、許さない。

 今夏の甲子園大会で、京都国際の背番号11をつける西村一毅は準決勝まで23イニングス連続での無失点を続けた。

準々決勝での京都国際・西村一毅投手(撮影/写真映像部・松永卓也)

 新潟産大付との2回戦に続き、智弁学園との準々決勝でも完封勝利。青森山田との準決勝では、5回裏からマウンドに立って5回無失点と、やはり点を与えない。連続無失点記録を伸ばす要因について、西村はこう語ったものだ。

「野手のみなさんが声をかけてくださって、プレッシャーなく投げられていることです」

 左腕は、下級生らしい一面を覗かせる。

 一方で、準決勝では「全員、三振に抑えるつもりでマウンドに上がった」と言い、投手としての本能、つまりは対峙する相手に対して牙を剥き出しにする強気な側面を持ち合わせる。一度、スイッチが入れば手がつけられない。西村の得意とするチェンジアップを、打者は捉えることができない。

「腕の振りが一緒なので、ストレートなのかチェンジアップなのか、打者は手元までわかりにくいと思う」

 自身のピッチングをそう語る西村は、「ストライクを取りにいってカウントを整えるもの、そして、空振りを取りにいくもの」と、左腕の振りを絶妙に変えながらチェンジアップを投げ分けているとも言う。

決勝10回裏、マウンドに集まる京都国際の選手たち(撮影/写真映像部・馬場岳人)

 1学年上の捕手・奥井颯大とは中学時代から同じ近江ボーイズでプレーした間柄だ。奥井が西村の魔球をこう語る。

「どんな場面でも使えるボール」

次のページ
「投げる瞬間まで力を入れない」脱力投法