働けど働けど、住まいがどうにも高すぎる――。現代人にとって、マイホームは手の届かぬ夢になりつつある。35年という長期ローンを組んでも、無事に老後にたどり着けるのか。高騰する住宅価格に悩む現代人を追う連載の4回目は、老後破綻に陥らないローンの組み方について。
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身の丈を超えなければ家を買えない
「身の丈を超えた金額でなければ、家を買えなくなってきている今、住宅ローンの組み方もこれまで以上にシビアに考える必要があります」
こう話すのは、家と住宅ローンの専門家で、『家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本』の著者でもある、公認会計士の千日太郎さん。
住宅ローンについて「自分の年収でいくらの家が買えるのか?」という視点から考える人が多いが、「年収だけでは適正なローン金額を判断することはできない」と釘をさす。
無理なく完済するためのルール
千日さんが「大前提として押さえておくべき」とする、無理なく完済できる住宅ローンのルールは、次の4つだ。
1 毎月の返済は「手取り月収の4割以下で、ボーナス払いなし」
2 返済額が一定になる「元利均等返済方式」
3 シミュレーションの金利は「固定金利」
4 定年時のローン残高は「1千万円以下」
1〜3は、現役時代の持続可能性を確保するためのルール、4は老後の持続可能性を確保するためのルールだ。それぞれ、順を追って説明しよう。
ボーナスはローン返済の算段に入れない
1について。住宅ローンの支払いは月ごとになるため、手取りの月収をベースに判断するといい。「4割」という数字は、あくまで目安の上限で、収入や家族構成によっては、3割でも厳しい場合もあるし、収入が多ければ5割を超えても問題ない場合もある。また、ボーナスは不確定要素が大きいため、ローン返済の算段に入れないほうがいい。
「30代の一般的なサラリーマンの収入を目安として、手取り月収の4割までと設定しても良いでしょう。賃貸住宅に住んでいるなら、現時点の家賃を目安にするのも一つです」(千日さん)
特に30代は、ローンを最も多く借りられる年代でもあり、頭金ゼロのフルローンで、自分が無理なく返せる金額をはるかに超えて借りてしまう人も多いという。
「頭金がないフルローンで買うのは、いざ売ろうとしたときに、売却額よりローンの残債のほうが高くなるオーバーローンになる可能性も低くない。オーバーローンでは、家を売らなければならない事態となったときに売れなくなるリスクが高いことを認識してほしい」(同)