「退職金で完済」はNG

 「退職金で完済したらいい」と考えるのはNGだという。

少子高齢化が進み、働き手が少なくなることを考えれば、今後、受け取る年金額は今より下がることが想定される。老後の生活が破綻しないためにも、退職金は老後資金に充てる計画が大切だ。

「『借りられる金額と返せる金額は違う』といわれます。これから肝に銘じるべきなのは、『返せる金額と老後を生きられる金額は違う』ということ。住宅ローンは基本的に現役時代の給料を貯蓄して完済しましょう」(同)

50年ローンの完済年齢は80~82歳

 一方で、住宅ローンの返済期間も長期化している。かつては最長35年とされていたが、今は50年に引き延ばす動きがある。50年ローンの場合、完済時の年齢を80〜82歳と設定するところが多い。

「マンションの価格が高騰し、従来型の住宅ローンでは、現実的に貸せる人がいなくなってしまう。金融機関としてはリスクも大きいものの、背に腹は代えられないということで苦肉の策として出したのが、50年ローンです」(同)

 定年の年齢を、20年近く超えて組むことになる「50年ローン」。「老後の生活が破綻するのでは」と懐疑的な見方も強いが、千日さんは「基本的には、なるべく長くローンを組んだほうが、借りる人にとってのメリットは大きい」と、こう指摘する。

「無理なく返せる金額」が重要

「計画性は必要ですが、ローンを長く組むほどに、人生の中で、いつ何にお金を使うかの選択肢を増やすことができる。月々の返済で必死になるより、“払ったつもり貯金”として、毎月一定額を貯蓄していけば、いざというときの予備費にもなる。繰り上げ返済にも使えます。資金と選択肢を温存することにもつながります」

 ローンで大切なのは、早く返すことではなく、無理なく返せる金額を組むことだという。前出の有田さんも、「金利や教育費が上がる可能性も踏まえて、現役時代に自由になるお金を手元に持っておくことは大切」と、こう指摘する。

「老後不安が大きいせいか、貯蓄型の外貨建て保険やiDeCo、会社のDCなどを併用して、老後にかなりお金をまわしている人も多いのですが、あまりお金を固めすぎると、いざというときに身動きが取れなくなります。若くて元気なうちに、やりたいことをやったり、行きたいところに行ったりと、いろいろな経験をするためにも、手元にある程度、自由になるお金を持っておくのは大切です」

 では、増加する単身世帯は今、どんな物件を買っているのか。選び方のコツと併せて、次回、解説する。

(ライター・松岡かすみ)

著者プロフィールを見る
松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

松岡かすみの記事一覧はこちら
暮らしとモノ班 for promotion
重いお米は通販で!おいしいお米選びの参考にするなら、Amazonの米・雑穀の売れ筋ランキング