最大のテーマは政治とカネの問題
その典型が、8月6日配信の本コラム「自民、立憲ともに民意が反映されない代表選は変えるべき “時代を変えるリーダー”を選ぶ『4つ』の改善点」でお伝えした河野太郎デジタル相の「変節」である。突出した脱原発主義を封印し、AI(人工知能)やデータセンター向けの電力需要拡大という想定外の事態に対応するという名目で、原発再稼働や新増設、さらには核融合なども含めてあらゆる選択肢を排除しないとして、原発推進派に配慮する姿勢を示した。これが真の変節かどうかはともかく、推薦人集めと決選投票に残った場合の国会議員票対策であるのは明らかだ。
ここへ来て、小泉進次郎元環境相の出馬を期待する動きが強まっているが、その小泉氏は河野氏に近く、脱原発派だと見られていた。
しかし、8月9日の発言では「福島第1原子力発電所事故の経緯を考えると、安全性をクリアしたうえでないと原発は動かせない」と指摘しつつも、「ここ(原子力発電所)を動かしていかなければ日本の経済、国民生活にとって必要な電力を供給できない」と強調したそうだ(日本経済新聞)。その理由として、気候変動による気温上昇やAIの発達、データセンターの増設など電力需要が高まる環境の変化を挙げている。河野氏の立論と全く同じ。パクリなのか、連携したのかわからないが、これをわざわざ今発信するのは、自身が立候補したときに国会議員票を取るためだと考えるべきだろう。
憲法改正や外交安全保障についても、各候補の公約が明確に違うということにはならない可能性が高い。というより、あまり突出した内容になるのを避ける結果、似たようなものになるということだ。
そもそも、国民、というか、国民に政治ニュースを伝える役割のマスコミの政治部記者は、自民党内の政策論争にあまり関心がないために政策論はほとんど話題に上らない。
岸田首相が示した後継総裁への注文は、「政治とカネの問題」「政治の信頼回復の問題」のために「改革マインド」を後戻りさせないというやや抽象的なものだったが、逆に言うと、岸田氏の「遺言」は、「政治資金改革である」と解釈することが可能だ。
そこで政治部記者への提案なのだが、政治とカネの問題について、岸田首相が設定した総裁選の最大テーマだという報道をしてはどうか。
そして、各候補に、岸田氏の思いを受け止めて、政治とカネについて、どういう改革を行うのかについて問いただしていくのだ。