古賀茂明氏
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 8月14日、岸田文雄首相が突然、9月の自民党総裁選に出馬しないことを発表した。

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 退任表明の記者会見では、自らの成果を強調する一方、政治とカネの問題で失った国民の信頼を取り戻すためには、自民党が変わったことを示す必要があること、そのために一番わかりやすい方法が自民党のトップである岸田総裁・首相自身が身を引くことだと判断したと退任の理由を説明した。

 問題が生じた当初から、そのことを考えていたかのような発言もあったが、そうであれば、早い段階でさっさと辞めておけば、ここまで自民党の支持率が下がることはなかったのにという声も聞かれそうだ。そういう意味では、辞めることを発表した以外には、あまり意味のある会見ではなかったという見方もできるだろう。

差のない公約が生まれる理由

 ただ、私から見ると、一点だけ重要な言葉があった。

 それは、総裁の後継について問われた岸田首相が答えた内容だ。

 「ただ、一つ申し上げるならば」として、後任の総裁に対する希望として、「一つだけ」課題を挙げた。その内容は、「政治とカネの問題、あるいは、政治の信頼回復の問題について、一連の改革努力が続けられてきましたし、これからも続けていかなければなりません。こうした一連の改革マインドが後戻りすることがないような方であってもらいたいということは、一つ感じております」というものだった。

 政治とカネ、政治の信頼回復のための改革マインドを持っている人間に後を託したいというメッセージだが、それは、実は重要な意味を持つ。

どういうことか。

 後継候補として名前が挙がる自民党議員の政策の違いが何かということを聞かれて、皆さんはどう答えるだろうか。

 ニュアンスの違いはあるが、最近までの各候補の発言を見る限り、あまり大きな違いはないように見える。

 それもそのはず。総裁選にはかなりの数の候補が立候補する可能性が高く、1回目の投票で過半数を取って勝利するのは極めて難しいと皆が考えている。そうなると、決選投票で圧倒的に大きな比重を持つ国会議員票をいかに集めるかが最後の勝負を分けることになる。多くの国会議員票を集めるためには、一人だけ特色ある公約を掲げて多くの議員の反発を買うリスクをとるより、なるべく当たり障りのない内容にとどめて、幅広く支持を集める方が得策だ。その結果、政策に大きな違いが見えなくなってしまう。 

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岸田首相の「遺言」とは