子どもたちと交流する村上茉愛さん(本人提供)

性的なコメントに嫌な気持ちになる

――現役を引退してコーチとなった現在は、誹謗中傷に遭うことはありませんか。

 誹謗中傷とまでは言わないかもしれないですが、たとえば「SNSの投稿内容がつまらない」みたいな、それって書かなくてもいいのでは?と思うコメントが来ることは時々あります。

 嫌な気持ちになるという意味では、体操の女子選手を取り上げたネットニュースに、性的な目で見るようなコメントがたくさんついているのも同じです。記事に対して、あえてその写真を載せるんだ……と思ってしまう時もあります。やっぱり露出の多いレオタード姿というのは、体操選手同士ならともかく、大勢の人の目にさらされるのは恥ずかしさもあるんです。

 どんな世界でも有名になればなるほど、良い意味でも悪い意味でも注目される。それは仕方ないことだと思う反面、仕方ないでは済まされない部分ももちろんあるので、嫌な記事を見つけたら(日本体操)協会を通じてメディア側に取り下げてほしいと伝えたり、ユニフォームも透けないように仕様を変えたり、これからも対策は進めていくべきだと思います。
 

――パリ五輪で誹謗中傷を受けたアスリート、そして誹謗中傷をしたSNSユーザーに対して、伝えたいことはありますか。

 私は体操女子の選手たちの練習に付き添ってきて、その頑張りはよく知っているし、体操に限らずとも努力をせずにパリに行ったアスリートなんて一人もいません。もちろんプロである以上は結果がすべてという部分もありますが、夢を叶えるためにどんな状況でもあきらめない姿勢や、それが叶わなくてチームみんなで泣いて悔しがっている姿も、人々を感動させる要素であり、スポーツの素晴らしさです。

 だから選手のみなさんには、結果にいたるまでの“過程”を応援してくれるファンが必ずいることを信じて、次に向かって頑張ってほしい。そして選手を見守る人たちは、どうか負けたからといって簡単にバッシングしないでほしいなと思います。自分が大丈夫だと思っても、受け取る側にとっては大丈夫じゃない言葉というのはあるので。

(聞き手・構成/AERA dot.編集部・大谷百合絵)

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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