現役時代の村上茉愛さん(本人提供)
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 日本選手団のメダル獲得数が、海外で開催された五輪では過去最多となったパリ五輪。期間中は日本人選手の活躍が連日報じられ、国中が湧いた。だが、柔道の阿部詩選手やバレーボール男子代表をはじめ、思うような結果を残せなかった選手への誹謗中傷が相次ぎ、日本オリンピック委員会(JOC)が「警察への通報や法的措置も検討する」と声明を発表する事態に。2021年の東京五輪の試合後、自身の誹謗中傷被害について泣きながら明かした元体操選手の村上茉愛さん(28)が、当時の涙の理由とSNSでバッシングをする人々に伝えたいことを語ってくれた。

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――現役時代はどのような誹謗中傷を受けていたのですか。

 東京五輪がコロナ禍で1年延期されることが決まってから、インスタグラムのDM(ダイレクトメッセージ)でバッシングが届くようになりました。「五輪出場は自粛しろ」という内容もあったし、プライベートの写真をアップすると「遊んでる場合じゃないだろ」とコメントがつくこともありました。

 当時は、アスリートが堂々と言葉を発することが難しい状況でした。五輪に反対している人も、大会半年前なのに練習を再開できていない選手もいる。テレビのインタビューでは「金メダルを狙います」って言うんですけど、こんな発言をしてもいいのかなと心の片隅ではいつも気にしていました。

 SNSの声に落ち込むのは、練習を終えて寮に帰ってからでしたね。私は、寮にいると「休んでいていいのかな」「早く練習しないと」と不安になるタイプなんですけど、誹謗中傷のコメントを見てさらに不安になってしまって。もし結果を残せなかったら、「この期間何をやってたんだ」「本当に練習してたのか」ってさらに攻撃されるんじゃないかと、怖くなることはありました。

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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“最上級の悪口”に傷ついた