鈴木涼美さん
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 作家・鈴木涼美さんの連載「涼美ネエサンの(特に役に立たない)オンナのお悩み道場」。本日お越しいただいた、悩めるオンナは……。

【写真】31歳鈴木さん、最後の“キャバ嬢”撮影

Q. 【vol.21】そろそろ“母親”から解放されたいワタシ(40代女性/ハンドルネーム「ミセスM」)

 すでに語り尽くされた感のある悩みですが、聞いてください。今年47歳になる女です。幼少期より妹の面倒を見ることを母親に押し付けられ、甘えなどは許されず、結果を出さなければ認められない環境をサバイブし、めでたくアダルトチルドレンとして成熟しました。制限だらけの学生時代が終わり、両親から逃げるようにモラハラ彼氏に入れ込み、結婚まで至りました。結婚生活においては持ち前の苦痛に耐える能力を遺憾なく発揮しましたが、歳を重ね、誤魔化しや我慢ができず、大爆発を経てめでたく離婚となりました。その間、育児、両親の在宅介護から見送り、仕事をフルでこなして人生の苦労を先払いした25年間だったと思います。

 娘2人は高校生、大学生となり、私にも心を寄せる方が最近現れましたが、はて、いつまで母親業務に徹しなくてはいけないのか悩んでおります。友人によっては、いつまでも子どもから求められるうちは母親でいなきゃという意見(友人は子どもが30歳を超えても実行している)や、学生が終わるまでは、家から独立するまでは、という意見が多いです。しかしながら、恋愛の賞味期限的なものを牛乳のそれより信仰している身としては、そこまで待って、また一人になってしまったらという不安が拭えずにいます。本音を言えば、もう誰の世話もせず、心配もせず、好きな男と暮らしてみたいというワガママな自分を抑えるのが辛いくらいです。娘たちが羽ばたく前に、母親が羽ばたくことは許されないのでしょうか。

A. 子どもが不服だからって何、と言いたい。

 母親であるということと、母親業務に徹するということはかなり温度差があるように思います。そして、仕事や親の介護をしながら子育てをしてきた相談者の方もきっとそうであったように、母親でありながら別の何かでもある、というバランスについてきっと多くの人が模索してきたのではないかと推測します。

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鈴木涼美

鈴木涼美

1983年、東京都生まれ。慶應義塾大学在学中にAV女優としてデビューし、キャバクラなどで働きつつ、東京大学大学院修士課程を修了。日本経済新聞社で5年半勤務した後、フリーの文筆家に転身。恋愛コラムやエッセイなど活躍の幅を広げる中、小説第一作の『ギフテッド』、第二作の『グレイスレス』は、芥川賞候補に選出された。著書に、『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』『非・絶滅男女図鑑 男はホントに話を聞かないし、女も頑固に地図は読まない』など。近著は、源氏物語を題材にした小説『YUKARI』

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