――どんな治療をしてくれるんですか

「精巣損傷の場合、大事でなければ痛み止めの処方で終わります。ただ、睾丸を包んでいる膜が破れた状態を『精巣破裂』って呼ぶのだけど、この症状になると大量出血することもあって、睾丸が子どもの頭の大きさくらいになることもあるんですよ。そうした場合は緊急的に手術をして止血して、場合によっては睾丸を縫うこともあります」

――子どもの頭……怖いですね。運よく数日で痛みが引いたから、僕は大丈夫だったんですね

「実はその考え方はとても危険なんです。自然治癒したかに見えて、睾丸が縮んでしまい精子を作る機能に悪影響が出たりする可能性もあります。手遅れになると、最悪の場合、手術で睾丸を除去しなければいけなくなります。安易に自己判断せず、すぐに受診することがとても大切なんです。

睾丸のケガの理由で一番多いのは……

――ぶつけて痛かった話って、友達とも笑い話になることが多いです。学校の先生など、子どもとかかわる大人は、みんな桑満先生が話したことを知っているのでしょうか

「知らない人もたくさんいると思います。睾丸をケガする理由は交通事故が一番多くて、次にケンカ、その次がスポーツなんだけど、大人は正しい知識がなくても、痛かったら自分の判断で病院にやって来ます。一方で、思春期の子は、言えなくて来なかったり、親などに受診をすすめられても反発してしまったりするケースが多いんだろうと思います」

――“タマ”の大切さに、男の子はあまり気付いていないのかもしれないですね

「軽々しく片づけがちなんですが、“銅”でも“銀”でもなく、“金”がついている意味をよく考えてほしいと思います。早く受診して適切な処置をすれば、将来に問題を残さずに済みます。『心配なら受診して』と、みんなに知ってほしいですね」

(聞き手・構成/國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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