森村泰昌(もりむら・やすまさ)/1951年、大阪市生まれ。85年、ゴッホの自画像に扮するセルフポートレイト写真を制作。以降、一貫して「自画像的作品」をテーマに作品を作り続ける。著書に『美術、応答せよ!』『自画像のゆくえ』など。2011年秋、紫綬褒章を受章(撮影協力/シュウゴアーツ 撮影/写真映像部・東川哲也)
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 AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。

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 自然災害、環境破壊、戦争、AIの発達、パンデミック──現代社会は「生き延びる」ことの困難を感じる出来事に満ちており、美術もその影響下にある。セルフポートレイトの手法で作品を制作し、「私」の意味を追求してきた美術家が、「生き延びるとは何か」というテーマに取り組んだ、モリムラ式人生論ノートとなった『生き延びるために 芸術は必要か』。著者である森村泰昌さんに同書にかける思いを聞いた。

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 自身がゴッホやマリリン・モンロー、三島由紀夫になるセルフポートレイト手法の写真作品を制作してきた森村泰昌さん(73)。文筆家としても多くの本を書いてきた森村さんの最新刊が『生き延びるために芸術は必要か』だ。

「これまでの本は自分の作品や、関連する美術作品について書いてきたんですね。今回は少し違って、芸術をどう捉えたらいいのかという、自分にとっての心構えを考えてみたいと思いました。実は『肖像(ゴッホ)』を発表してから、来年で40年になるんですよ。節目を前に少し立ち止まって、これからの自分がどう進むのかについて、考えてみたかったんです」

 本書は森村さんの実家をめぐる「建物の介護」の話から始まる。近年は古民家再生プロジェクトも話題だが、森村さんは「有効活用」という言葉に引っかかりを覚えた。

「役にたたないものはあってはいけないという、嫌な感じがしたんです。有効であることが当然だと言う発想には、詩的想像力が欠けているんじゃないでしょうか」

 本書は「第一話 生き延びるのはだれか」と、第四話から第六話までが、ある大学で続けてきた講義をもとにまとめたもの。他に開講予定の講義ノートを先取りする形で書き下ろした文章、美術館での講演をもとにしたものが入っている。ゴヤ、ベラスケスといった画家が、いかに彼らの時代を生き延びたのか。権力者との複雑な関係についての考察は、美術家ならではの読み解きがスリリングだ。

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