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他にも多くの文学作品や映画が登場する。小松左京『復活の日』、レイ・ブラッドベリ『華氏451度』、キューブリック「2001年宇宙の旅」といったSF作品。そして明治という時代を考えるために、夏目漱石、司馬遼太郎、松本清張も引用される。
「勇ましいタイトルをつけましたが、結論づけてはいないし、最後の章のタイトルは『生き延びることは勇ましくない』です。私は説教したかったわけではなく、答えのない問いを抱えた自分自身の備忘録として、苦悩の痕跡をノートのようにまとめました」
森村さんは本の終盤で、こう書く。〈生き延びるために芸術が必要なのではない。生き延びることができないもののために芸術は必要なのだ〉
さて、本の最後で、森村さんは冒頭に出てきた実家をどうすべきか、芸術的なプランを検討する。どのようなものであるかは、ぜひ本を読んで確かめてほしい。
「役に立つことと、生き延びることは、まったく別問題です。役に立つかどうかとは無関係に、生き延びていてほしいとねがう気持ちが、なにものかを生き延びさせるのでしょう」
森村さんが言う「なにものか」は芸術に限らないだろう。建築、人間、神宮外苑のような都市空間、あるいはそうしたものを愛おしむ、私たちの気持ちそのものかもしれない。(ライター・矢内裕子)
※AERA 2024年7月29日号