せやま南天『クリームイエローの海と春キャベツのある家』(朝日新聞出版)
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せやま:潮井さんが先生だったら一緒に楽しく遊んでくれそうな気がします。

潮井:できていたかどうかはわからないですけど、そういう気持ちはずっと持っていました。どんなことでも、子どもたちが楽しんでいなければ、私のエゴになってしまう。私が思いどおりにさせている状態になったら、子どもたちは全然おもしろくなくなってしまうので。

 子どもたちが「おもしろい!」と夢中になっている時って、自分でいろいろ考えて行動している時なんです。子どもたちが楽しそうにしている姿を見た時は、いい仕事だなあという気持ちになりました。

せやま:すてきですね。

「うわー、難しいな、人生!」

潮井:『クリキャベ』にも、織野家の5人の子どもたちが出てきますけど、(シングルファーザーの)朔也が、仕事と家事を全部一人でやろうとしていっぱいいっぱいになっているのを見て、そのひずみのようなものが子どもたちに出ているのが、リアリティーがあるなと思いました。

せやま:子どもたちも一人ひとり思っていることがあるだろうなというのは、考えながら書いていました。私も子育てをしながら、「子どもってからだが小さいだけで、大人と同じように自分の考えがあるし、やりたいこともある」と思ったんです。

 2歳ぐらいまでは、生まれたばかりの赤ちゃんみたいな感じもありましたけど。そういう経験を生かしながら書いていったと思います。

潮井:(織野家の次女で6年生の)樹子(きこ)があばれたところは特に共感しました。すごくストレスがたまって、気持ちとからだが別になる瞬間を、私も経験したことがあるので。

「どうしたらいいか自分でもわからない」と樹子が言っていたと思うんですけど、「ほんとにそう!」と思いながら。そうやって発散しないと自分を保てないという気持ちがすごくわかったので、あの場面に差し掛かった時は胸が痛くなりました。

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登場人物の生きづらさ