>>対談中編「『誰にも奪えない』『自分にしか書けない』自分だけの言葉を大切にした新人作家ふたりの眼差し」よりつづく
子どもはいきいきしていて明るいだけではない。ときにストレスで「気持ちとからだが別」になってしまうこともある。
今年デビュー作を上梓したふたりの新人作家が、そんな子どもたちの姿をリアルに書き上げた。
ひとりは潮井エムコさん。初めて書いた高校時代の思い出についてのエッセイをウェブ上のメディアプラットフォーム「note」にアップしたところ、SNSで拡散され、累計30万を超える「いいね」を獲得。今年1月に初のエッセイ集、『置かれた場所であばれたい』(以下、『置かあば』)を刊行した。
そしてもうひとり。せやま南天さんは、仕事と育児を経験し、「家事」というものと向き合うなかで着想を得て、小説『クリームイエローの海と春キャベツのある家』(以下、『クリキャベ』)を執筆。noteが主催する創作大賞2023で朝日新聞出版賞を受賞した。
潮井さんのエッセイでは、幼い頃の潮井さん自身や友人たち。せやまさんの小説では、母を失った織野家の5人の子どもたち。作中の子どもたちの姿からは、「良い子」の枠にはめられる息苦しさと、その枠を押し破ろうとするエネルギーが感じられる。「子どもを一個の人格として尊重すること」について、作者が語り合った。
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ふたりのコンプレックス
せやま南天(以下、せやま):私は昔、システムエンジニアとして働いていた頃に、上司から「せやまさんはいつも最短ルートばかり通ってるね。もっと寄り道してもいいんだよ」と言われたことがあって。真面目すぎることがちょっとコンプレックスなんです。