平本浩実さんは今春まで東京都の公立中学校の校長を務めながら、都中体連会長などを歴任してきた=東京都内、米倉昭仁撮影

「部活をやりたい」という気持ち

 内田教授はこう指摘する。

「大会に向けて、どうしても練習をしたい先生や生徒がいる。炎天下での練習がどんなに危険であっても、『部活をやりたい』という気持ちが勝ってしまう。スポーツ庁や競技団体は、熱中症の危険性を訴えるだけでなく、夏の大会の中止も含めて、子どもたちの命と真剣に向き合ってほしい」

 今回、日本中体連は、3年前から「全国大会組織の在り方改革プロジェクト委員会」を立ち上げ、持続可能な全国大会について協議を重ね、今回の全国大会の規模縮減にいたった。

 水泳やハンドボール、体操、新体操、ソフトボール男子、相撲、スキー、スケート、アイスホッケーの9つの競技について実施しないことを決めた一方、陸上競技、バスケットボール、サッカー、軟式野球、バレーボール、ソフトテニス、卓球、バドミントン、ソフトボール女子、柔道、剣道の11競技は継続する。

 継続する競技についても会期を3日間以内、大会規模についても30%減とする目標を定めた。3日間は「あくまで目標値」で、最優先するのは「子どもたちの安全」だという。

これ以上の暑熱対策に課題

 日本中体連は、これまでも全国大会を運営するにあたってさまざまな熱中症対策をとってきた。

 特にサッカー、軟式野球、陸上などの屋外競技は熱中症の危険度も高く、なかでもサッカーは運動負荷がかかる時間が長い。そのため、試合をできるだけ涼しい時間帯に行ったり、休息や水分補給の時間を設けたりして、選手の健康状態を確認してきた。

 ただ、これ以上の対策しようにも課題があるという。たとえば、日中ではなく夜間に試合を行うためには、照明装置のある会場が必要だ。会場が限られるうえ、借用費用もかさむ。

「会場までの距離が離れていれば、参加選手や観戦者の送迎、宿泊施設の夕食の時間、健康管理の問題が出てきます。大会運営には大勢の教員や中学生が関わっているので、子どもたちを夜間に手伝わせていいのか、という課題も出てきます」(平本さん)

 夏の屋外競技に限って、冷涼地で固定開催する案もある。実際、全国高校総体(インターハイ)サッカー男子は、この夏から福島県のJヴィレッジ(楢葉町・広野町)を拠点に固定開催される。

「開催地の教員に偏ってしまう負担をどう解決するかも課題です」(同)

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