教員の負担をどう減らすか
全中大会縮小の背景にあるもう一つの大きな理由は、教員の負担だ。
たとえば、サッカーの場合、6日間の会期中、「会場駐車場」「記録報道」「救護」「観戦者案内」などに200人以上の教員が携わる。
協力する多くは地元の教員で、「先生方のボランティアに頼っている部分も多い」(平本さん)という。
「地方だと人手も限られてしまうため、競技の専門外の先生方にお願いせざるを得ないケースもあるでしょう。今後は教員の負担はできるだけ大会運営の骨子に絞って、受付や駐車場係などの業務は外部に委託していくべきでは、と考えています」
だが、運営の一部を民間業者に委託すれば、そのぶん費用がかかる。費用をまかなうために、「企業の社会貢献の一つとして、全中大会を支えてもらえないか、スポンサー企業を探しているところです」という。
子どもたちのスポーツ離れ
一方で、世の中には「子どもたちのスポーツ離れ」というまた別の事情もある。
総務省の「社会生活基本調査」によると、年に1日でもスポーツをしたと答えた割合は、10~14歳では1996年は97.3%だったが、2021年は86.3%と11.0ポイント減った。この間、野球やサッカーをする子どもは約2割も減少した。スポーツ庁によると、13年、部活動に加入する中学生は228万人だったが、22年は187万人と、約18%減少した。
教員の働き方改革の一環として、部活動を地域のスポーツクラブなどにまかせる「地域移行」の取り組みも始まった。
学校が荒れていた時代の意義
「これまで日本の子どもたちのスポーツは部活動が中心でした。特に中学校の部活動は専門的な競技に触れる最初の機会であり、その存在意義はとても大きかった」と、少し寂しそうに平本さんは言う。
「部活動が競技力の向上を担ってきたこともありますが、学校が荒れていた時代は、放課後、居場所のない生徒たちを受け入れるといった生活指導の側面を担ってきたのも部活動でした」
また、部活動をする子どもの数が減れば、部活動の設置率は下がり、地域移行もさらに進む可能性もあるだろう。
「いずれは、全中大会はなくてもいいという意見も出てくるかもしれません」
ただし、スポーツクラブや指導者の数が少なく、施設面などで子どもたちのスポーツの「受け皿」に悩む地域は少なくなく、地域移行は順調ではないケースも多いという。
課題は山積だが、平本さんはこう語った。
「決断すべき事情があるにせよ、スポーツをする子どもたちにとって、全国大会は大きな夢のひとつに違いない。苦渋の決断だったのは間違いありません」
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)