全国中学校体育大会が2027年以降の9競技の実施中止と11競技の規模縮小を決めた。22年8月、山形県で行われたサッカー競技
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 来月、全国中学校体育大会(全中大会)が開催される。日本中学校体育連盟(日本中体連)は6月8日、全中大会について、2027年度以降は9競技の実施中止を発表。大会を続行する11競技も規模の縮小を決めた。背景には3つの事情があるという。

【写真】「最優先は子どもの命」と決断の背景を語る日本中体連の事務局長

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炎天下、息子の部活が心配

 関東甲信越地方も梅雨が明け、連日、屋外はやけつくような猛暑だ。

「熱中症は心配です。息子は、カンカン照りにもかかわらず、水筒や帽子を忘れて部活動に行ったりするんです」

 ソフトテニスの夏の大会を目前にした男子中学生の保護者はこう話す。

「中学生の息子は熱中症がどれほど危険か、きちんと理解していない気がする。顧問の先生が水分や塩分の補給をきちんと考えて指導してくれていればいいのですが……」

27年度以降は規模を大幅に縮小

 全中大会とは、中学校の部活動の全国チャンピオンシップだ。

 だが、27年度以降は規模を大幅に縮小することが、今年6月、発表された。女性の息子が励むソフトテニスも大会を縮小する競技のひとつだ。

 こうした決断に競技団体の一部からは反発意見が出ているが、日本中体連の事務局長、平本浩実さんは「暑熱対策は大会縮減に向けた大きな理由の1つであり、子どもの命を守ることは大会を運営する者として最優先事項になります」と話す。

 全中大会の多くは夏に開催される。熱中症のような症状を訴える選手が出るたび、識者らから「屋外競技の大会を夏に実施するのは、見直すべきでは」という声が上がってきた。

熱中症は中学生で増加

 名古屋大学大学院教育発達科学研究科の内田良教授は、今回の決定を「大きな前進であり、英断」と評価する。

「熱中症や過度の練習など、部活動に起因する子どもの命にかかわる問題の根本は夏の大会にあります。その大会のあり方がようやく変わり始めた」

 3年前に環境省と文部科学省がまとめた「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き」によると、熱中症で特に注意が必要なのは体が小さな子どもだ。

 熱中症の発生件数は、小学校では比較的少ないが、部活動が一般的になる中学生でグッと増える。また、小学6年生では年間200件以下だが、中学1年生では600件以上と3倍以上だ。小中高生の部活動とそれ以外での発生件数を比較すると、部活中の発症は約85%にものぼる。

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