条例は「重要な一歩」
今年3月、福岡県議会で、3つの要件、①性的な意図があること、②同意がないこと、③正当な理由がないことを満たした場合は、着衣の上からの撮影であっても「性暴力」であることを明記した条例の改正案が可決、成立した。
工藤弁護士は、この条例を「重要な一歩」だと評価する。
「昨年、衆参両院の法務委員会で『撮影罪』の法案が可決された際、それぞれの『付帯決議』において、アスリート盗撮も規制対象とすることが検討課題として明記されました。さらなる法改正の検討を望みます」
安心して競技に集中
大会運営側も“不適切な撮影”の防止には心を砕いてきた。
アスリート盗撮防止の啓発活動を行うだけでなく、スタート地点の後方などからの撮影を禁止する取り組みを行う競技団体もある。
日本学連主催の大会では、撮影禁止エリアや、撮影の事前申請制度を設けることで「競技観戦を楽しむ方法の一つとしての撮影」と「選手が安心して競技に集中できる環境の確保」との両立を図ってきた。
「迷惑撮影巡回中」「場内監視」と書かれた腕章やビブスをつけた係員がスタンドを巡回して撮影者に声がけをするなどの取り組みも増えた。
工藤弁護士は、不適切な撮影と通常のアスリート撮影の違いを指摘する。
「不適切な撮影をしている人は、撮影のアングルやタイミングが普通の撮影者とは明らかに異なります」
ただ、マンパワーによる抑止は完全には難しいという。
「どこの競技現場も非常に苦労しています。安全かつ確実に大会を開催し運営することが最も重要であり、多くの人の善意で成り立っている競技会で、人員をなかなか巡回にまでは割けません。担当者には『観客を疑ってかかるようなことはしたくない』という思いもあります」
赤外線に透けないウェアが登場
極めて悪質な赤外線カメラによる盗撮については、6月、進歩があった。スポーツ用品大手ミズノ(大阪市)が、赤外線盗撮を防ぐ新素材「ドライエアロフローラピッド」を採用したTシャツを発売したのだ。
従来品よりも速乾性や快適性がアップしたうえ、赤外線カメラへの防透け性能も向上している。パリ五輪のユニホームにも採用され、バレーボール女子、卓球女子、ホッケー女子、近代五種、アーチェリー、ライフル射撃で使用される。