晩婚・晩産化を背景に、育児と介護の「ダブルケア」が働き盛りを中心に広がっている。誰にも相談できず、孤立しがちだが、支援は追いついていない。「2025年問題」も控える中、必要な「備え」と、求められる対策は何か。AERA 2024年7月15日号より。
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横浜市に住む女性(42)も、1人でダブルケアをしている。
「私以外いないので、私がやるしかありませんでした」
20年12月、父親(79)が病気で倒れ緊急入院し、続いて母親(75)の認知症が始まった。4歳の娘は、当時まだ1歳。
女性は一人っ子で、夫(44)には自分の親の介護は頼めなかった。両親は車で40分ほどの場所に住んでいて、急なことだったので娘を預かってくれるところがない。娘をベビーカーに乗せ、病院や実家を往復した。
娘は、年をとってから生まれた待望の子どもだった。それだけに子育てを楽しみにしていたが、常に両親の介護のことで頭がいっぱいに。しかもダブルケアのつらさは当事者にしかわからないと思い、ママ友にも相談できなかった。今思うと、精神的にも追い詰められていたかもしれないという。昨年夏、母親は認知症が進み、特別養護老人ホームに入居した。娘も一昨年から幼稚園に行くようになったので、ようやく身動きが取れるようになったというが、こう思う。
「自分にきょうだいがいればなって、何度も思いました」
ダブルケアをしている人たちが、子育てと介護の悩みを打ち明け相談できる場は少ない。そうした中、注目されているのが「ダブルケアカフェ」だ。ダブルケア当事者同士の想いの共有の場として、全国の約20カ所で行われている。
「同じ境遇の人たちが何の利害関係もない中で思いを吐き出し、スッキリしてお家に帰ると、家族にも優しくなれます」
そう話すのは、「岩手奥州ダブルケアの会」代表の八幡初恵さん(44)だ。
16年から岩手県奥州市や花巻市など県内4カ所で、定期的にダブルケアカフェを開催している。きっかけは、八幡さん自身もダブルケアラーになったこと。第2子の妊娠中から、認知症になった姑の介護が始まった。