当時、八幡さんは30代。誰かに相談したくても、周りに介護をしている同年代の知り合いがいない。それなら自分でつくろうと思った。
カフェには40代を中心に女性が多く訪れる。「おしゃべりオンリーです」と八幡さん。お茶などを飲みながら約2時間、それぞれの近況報告や情報交換などであっという間に時間は過ぎる。最近は、親が弱ってきて心配だから、ダブルケアが始まる前に話を聞いておきたいという人も参加するようになったと八幡さんは言う。
「ダブルケアをしていると孤独感を深めていく人が少なくありません。ダブルケアカフェが一人じゃないと気づくきっかけにもなってほしい」
来年、800万人の団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」を迎え、ダブルケアに直面する30代、40代も増えるだろう。しかも、突然に。どのような「備え」が必要か。
一般社団法人「ダブルケアサポート」(横浜市)理事の植木美子さんと代表理事の東(あずま)恵子さんからのアドバイスを一覧にした。中でも「情報」の大切さを強調する植木さんはこう話す。
「親やパートナーが急に介護が必要になることがあります。自分は大丈夫と思わないことが、介護に関してはとても大事です」
ダブルケアは少子化と生活困窮につながる
横浜国立大学大学院の相馬直子教授(福祉社会学)は、ダブルケアは「少子化と、生活困窮や貧困のリスクになる」と警鐘を鳴らす。
「特に晩婚化や晩産化の中でダブルケアになると、第2子を諦めることになり、そうなると少子化が加速します」
そして、ダブルケアのために働けないことが、生活困窮や貧困につながるという側面もあるのではないかと相馬教授は言う。
「これからダブルケアしながら働くことが当たり前の社会となっていきます。『介護離職』も、ふたを開けてみると事実上の『ダブルケア離職』であることが少なくありません。育児と介護を両方しながら働く人の目線で、社会制度を問い直すことが必要です」