ダブルケアの問題を次世代に残さないためには何が必要か。相馬教授は、まず「人を世話することへの社会通念を変えることが大切」と話す。

「育児も介護も、立派な社会貢献であり労働です。それを、介護は家族の無償労働であると見なされている今の社会通念を変えることが必要です」

 その上で、「社会経済的な評価が低いケアの現状を改めることが極めて重要」と説く。

「現在、ケア労働は過小評価され、ケアワーカーの賃金は低く、全産業の平均給与を下回っています。ケア労働の評価を政策的に引き上げ、ケアワーカーに適正な報酬が支払われることが、ダブルケアのような複合的なケアを支援する上で最優先課題です」

 そしてダブルケアの支援団体やダブルケアカフェといった、地域のソーシャルキャピタル(社会関係資本)を維持して守るコミュニティーワークに従事する人たちの評価を引き上げることも大切だと言う。

「ケアが豊かな民主主義(ケアリング・デモクラシー)は、ケアが豊かな地域社会に支えられると考えます。地域づくりにかかわる人たちは手弁当で続けていますが、それに対して社会経済的な評価を高め、適正な報酬を払う制度を充実させることも大切です。地域づくりの活動を、私たちはもっと評価すべきです」

(編集部・野村昌二)

AERA 2024年7月15日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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