「誰にも相談できなければ孤立し、さらに一人で様々な負担を抱えることになり、一人では到底抱えきれない『過重ケア』となります」(同)
こうして負担は増えているが、公的支援は追いついていないのが現状だ。
「縦割り行政で、横断的な支援ができていません」
こう指摘するのは一般社団法人「ダブルケアサポート」(横浜市)理事の植木美子さん。同法人は、全国初のダブルケア支援団体として、16年に設立された。植木さんによれば、大阪府堺市のようにダブルケア専用の相談窓口を設けている自治体はわずか。ほとんどの自治体が「育児」と「介護」で相談窓口が違い、たらい回しにされ、各窓口で同じ説明をすることになり、手間と時間がかかるという。
「さらに、『縦割り』によって情報共有ができていないことによる問題もあります。例えば、子どもが複数いるのに同じ保育園に入れず、別々の保育園に入ることがあります。ダブルケアで介護もあって大変だとわかっていれば、同じ保育園にした方がいいという配慮もできますが、連携ができていないためできません」(植木さん)
ダブルケアサポート代表理事の東(あずま)恵子さんは、「ケアが1人に集中していることが問題」と指摘する。
「しかも日本の場合、社会通念として嫁や娘、つまり女性に集中しがちです。結果的に、孤立を深める要因にもなり、介護虐待や子どもへのネグレクトなどのリスクが高まります」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2024年7月15日号より抜粋