AERA 2024年7月15日号より

「どうすればいいのか、自分でもまだわかりません」

 子育て介護のように、複数のケアをいっぺんに迫られる「ダブルケア」が働く世代を中心に広がっている。内閣府が2016年に公表した調査では、少なくとも全国に25万3千人いると推計された。このうち男女共に8割を30代から40代が占め、晩婚・晩産化を背景に、子育ての時期に親の介護が重なる状況が浮かび上がった。

「ダブルケア」は12年、横浜国立大学大学院の相馬直子教授(福祉社会学)らが、ソニー生命との調査で生みだした概念だ。今まで光を当てられてこなかった「ケア労働」のリアルを明らかにし、国による支援策の必要性を説いてきた。だが調査から12年が経った今、相馬教授はこう語る。

「ダブルケアを取り巻く環境は、ますます悪くなっていると危惧しています。多重ケアが過重ケアを招いています」

誰にも相談できずに孤立 一人では抱えられない

 昨年10月、相馬教授らはソニー生命とともに4回目となる「ダブルケアに関する調査」を実施。大学生以下の子を持つ30~59歳でダブルケアに直面、もしくは過去に経験した男女計1千人を対象にインターネットで行った。その結果、育児をしながら実親など1人のケアをしている人は全体の57%で、残りは育児+実親や義理の親、障害のある子など、2人以上のケアをしていることがわかった。

「ケアの人数が多ければ多いほど、精神的負担、体力的負担、家事の負担、仕事との両立、経済的負担など負担感が高くなりました。家族がケアの責任を担い続け、それが複数重なり多重な負担になっています」(相馬教授)

 調査結果で最も注目したのは、ダブルケアになった際、「相談相手がわからないこと」だ。例えば「育児+1~3人のケア」の場合は約10%、「育児+4人のケア」の場合は25%が「誰に相談したらよいかわからない」と回答した。背景には、ダブルケアがまだ広く知られていないため、ダブルケア特有の困り事がどういうものか周囲や本人自身も言語化できないことなどがある、という。

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