――さらに「きらーず」のミュージックビデオのディレクションも渡辺さんが担当。渡辺さん、澤さん、サポートミュージシャンの藤本ひかりさん(ベース/ex.赤い公園)、大谷ペンさん(ドラム/ザ・ラヂオカセッツ)が楽しそうに演奏したり、パーティーをしたりしているシーンが収められています。
パッと見た感じは楽しそうなんだけど、じつはここにも鬱屈としたところもあって。演奏もパーティーも同じ場所でやっていて、場面が変わらないんですよ。空は開けていて明るいんだけど、その場から出られない。明るく歌ってるんだけど、じつは停滞している。それは自分のなかで、コロナ後の社会の空気とつながっているんですよね。外に出られるようになったけど、心はまだ外に出ていないというか。
役者としての活動があるからこそ、音楽をたのしくやれる
――コロナ以降の音楽シーンも、どこか窮屈な印象があります。確かに若い才能はどんどん出てくるんだけど、「失敗できない」というプレッシャーが強くて、人に聴かれること、売れることを意識し過ぎているというか。
それは自分も感じるし、けっこう危ういことだなと思います。たとえば「YouTubeをどう使うか?」みたいなことも考えなくちゃいけないんだろうけど、「どうやって売るか」の前に曲の話をしたがほうがいいんじゃない?って。もちろん音楽が好きでやっているんだろうし、良くない曲なんてないんだけど、窮屈さは確かにあって。「セルフプロデュース能力を上げないと生き残れない」というのもあるじゃないですか。それが出来ている人は本当にカッコいいし、僕はそれがやれなかったから、憧れや悔しさもあるんですよ。ただ、僕としては「そういうことを考えなくても音楽をやれる状態を作るのことも、大事なんじゃないか」と思っていて。自分の場合は、その方法が役者業との両立なんですよね。
――役者としての活動があるからこそ、音楽を楽しくやれる。
そういうバランスを作れたのかなと。自分が役者として売れているとは思わないですけど、ありがたいことに定期的に仕事をいただけているし、だからこそ音楽は純粋な楽しみとしてやれているんだと思います。もしかしたら「ずるい」と思われるかもしれないけど、それが僕の強み。役者と音楽の両方をやっているからこそできる表現があると信じているんです。