――気軽にパンクを楽しんでいる30代のバンド、たしかにいないですね。
そういう人たちを見てみたかったんですよね、自分も。同世代の友達と話していても、みんなマジメだし、悩んでる人が多いんです。ここからどういう段階を踏んで、どういう作品選びをして……みたいに真剣に考えていて。僕もそうですし。それは美しい悩みだなとも思うんですけど、もっと軽く楽しいことをやってもいいのにと感じるときもあって。だったらそれを自分たちでやってみようという感じですね。
――なるほど。黒猫CHELSEAとして配信リリースされたシングルには、「きらーず」「グッバイノスタルジー,ハローデストロイ」の2曲が収録されています。
「グッバイノスタルジー,ハローデストロイ」は活動休止前からあった曲を再アレンジしたんです。「きらーず」は、澤が作っていたデモ音源のなかから「これがいいね」という曲を選びました。さっき言った“親しいパンク”という感じがしたし、澤とは「リチャード・ヘルとかギャング・オブ・フォー(※)みたいな感じの曲やりたいね」という話もしていて。しかも圧が強くなくて、ちょっとユルい感じがあるんですよね。※リチャード・ヘル(米)、ギャング・オブ・フォー(英)はいずれも70年代後半~80年代前半のポスト・パンクを代表するアーティスト
――「きらーず」の歌詞は渡辺さんですね。
この曲のデモを聴いたときに「自分で歌詞を書きたい」と思ったんです。ユルさと熱量がある曲だからこそ、自分のなかにあるメッセージを強めに出しても成立しそうだなと。聴き心地と言葉選びは軽いけど、歌詞の内容はじつは濃いというか、しっかり残るものにしたかったんですよね。すっと入って、すっと抜けちゃうのではなくて、「ん?」と1回考える時間を作りたかったというか。以前から歌詞を書くときは、鬱屈したところからの叫びだったり、そこからどう脱却するか?というのがテーマで。それをようやく等身大でやれるようになったのかなと思います。