自分たちは以前、音楽を商品にすることにも挑戦してきましたが、それを踏まえて、再始動するなら純粋にいまやりたいことだけをやるバンドを作りたかったというか。そこは澤ともフィットした部分だったし、澤が持ってきてくれた「こういう曲をやりたい」というデモ音源にも「いいね」ってすごくノレたんですよ。澤も僕が作っていた曲を聴いて「こんなの作ってたんや?」って喜んでくれたし、「これならいろいろ出来そうやな」って盛り上がったんです。脱退した2人について僕から想いを代弁することはできませんが、別に仲が悪いわけではなくて、これからやろうとしているその音楽と2人のいまの気持ちが合わなかったということだと思います。
やろうとしていることは「親近感のあるパンク」
――黒猫CHELSEAとしてやろうとしていることとは?
言葉にするなら、親近感のあるパンクですね。ソリッドで尖ってはいるけれども、聴く人を突き放すような音楽ではなくて、朝起きたときから聴けて、生活をともにできるようなパンクをやりたくて。世の中には素晴らしい音楽がたくさんあふれていて、聴いてるだけで十分に楽しいんですよ。でも同時に、「本当に自分がいちばん聴きたい音楽は、今世の中にある音楽とは少し違う」という感覚もあって。それを黒猫CHELSEAでやろうとしているのかもしれないです。あと、1人で作った曲が山ほどありますからね。“自分だけが知ってる”という状態のままだと曲が浮かばれないような感覚があって、それもあってバンドをやりたいのかなと。
――あくまでも自分たちの表現欲求に従っているというか。ちなみに自分より若い世代のアーティストの音楽についてはどう感じていますか?
素晴らしい才能を持った若い人がどんどん出てきて本当にすごいなと思います。でも一方で「綺麗に整理された曲、いいことを歌おうとしてる曲が多いな」という気もして。そればかりだと疲れるというか……。言葉にできない気持ちとか、はみ出しちゃってる異質感とか、いろんな感情の音楽があっていいと思うんですよ。“何かっぽい”ものじゃなくて、その色んなもののひとつでありたいと思っています。あと、30代になった自分たちが楽しそうにパンクをやってたら面白いかなって思ったんですよね(笑)。年下の世代にもいいバンドがたくさんいるので、「負けないように」じゃないけど、「30代でもこんなに楽しくやれるぜ」っていう気持ちもあります。