国際リプロダクションセンターが設けられた獨協医科大学埼玉医療センター=埼玉県越谷市、米倉昭仁撮影

「新法」まだできていない

 非匿名のドナーが開示する情報には大きな幅があるという。みらい生命研究所の非匿名ドナーでは、簡単な体の特徴や職業、趣味であれば開示を認める人がいる一方、「面会してもいい」というドナーも半数弱いた。

「提供精子で生まれた子どもが18歳になったら、携帯電話の情報を開示して結構です、希望があれば会いましょう、という人もいます」

 同研究所は国内2カ所の医療機関で、無精子症などに悩む不妊カップルなどに第三者の精子を提供。これまでに人工授精(AID)64件、体外受精(IVF-D)88件の精子が凍結保存された。

 ところが、精子の提供を始めてから1年ほどたったころ、「獨協医科大学当局からストップがかかった」。同研究所の存続は新法の成立が条件だったからだ。

「あと1年待ってください、とお願いした。でも、いまだに新法はできていない。大学の判断は正しかった」

ギブアップしたわけではない

 ただ、活動は中止したものの、ギブアップしたわけではないという。

 提供精子は獨協医科大学埼玉医療センター・国際リプロダクションセンターが引き継いだ。新法が成立すれば、同センターで活動を再開するという。その際は、精子を提供するだけでなく、DIも行う。

 岡田さんが最優先にしているのは「子どもの福祉」だという。

「我々は提供精子を使って生まれた子どもたちに対して責任があります。この医療に法律的な裏付けができたら、少なくとも1千人程度の子どもたちが、中学生くらいまでどのように育ったのか、追跡調査をするように体制を整えるべきです。でなければ、我々の行為が正しかったのか、検証できません。どう改善すればいいのかもわからない」

 技術的な側面だけなら、精子バンクをつくるのはそれほど難しくないという。

「精子バンクに必要とされるのは、誕生した子どもたちの幸せをできるだけ保障する仕組みを盛り込み、それを実践していくことです」

そう、岡田さんは熱を込めて語った。

顕微鏡で精子の運動について詳細に調べる=埼玉県越谷市、2021年、工藤隆太郎撮影

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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