「令和の怪物」と称された右腕は異色の育成プログラムで土台を築いた。高卒1年目の20年は1、2軍で共に公式戦登板なし。1軍に1年間帯同して肉体強化を図った。その後も肉体強化に重点を置きながら、首脳陣は実戦登板で球数や投球回数に神経を使った。22年に完全試合を達成した次回登板でも「球界の宝を大事に育てる」方針はブレなかった。4月17日の日本ハム戦(ZOZOマリン)で、8回まで1人も走者を許さず、14奪三振無失点のパーフェクト投球。史上初となる「2試合連続完全試合」の期待がかかったが、0-0で迎えた9回のマウンドに上がらず。取材した記者はこう振り返る。
「何度もできる記録ではありません。一生に一度のチャンスだったかもしれません。ただ、故障のリスクを考えると首脳陣は続投させるべきではないと判断した。賛否両論の声が上がりましたが、間違っていなかったと思います。あの交代劇を見た時、批判されても佐々木朗を世界一の投手にしたいという球団の本気度を感じましたね」
実績を積み上げた大谷、山本らとは違う
海の向こうに憧れの気持ちを抱くことは決して否定されることではない。昨年世界一に輝いたWBCで侍ジャパンの一員として戦ったことで、その思いが強くなったことが想像できる。だが、メジャーで活躍している大谷、山本、ダルビッシュ有(パドレス)、今永昇太(カブス)は日本球界で実績を積み上げ、チームへの貢献度が評価されてポスティング・システムでの挑戦が認められたという背景がある。
シーズンはもう少しで折り返しを迎えるが、佐々木朗は現時点で投球回数が59回2/3。今回の故障で長期離脱するようであれば、自身初となる規定投球回数のクリアは厳しい。それでも今オフにメジャー挑戦の意向を訴えるのだろうか。
前出の他球団編成担当は懸念を口にする。