伊藤明子さん(撮影/写真映像部・松永卓也)

 もちろん「細部に命が宿る」と現場で仕事に打ち込む考え方もあります。建築でも、デザインが好きでディティールにこだわりたいという人もいる。私の場合、学生時代に設計があまり得意ではなかったというのもありますが、もともと建物をみても「これって、誰が、どんなふうに関わったプロジェクトなんだろう」と、それが出来上がるまでの仕組みの方に関心があった。

――つまり、個人の選択の問題だと。

伊藤:ただ、メインテーブルに就くことをためらわないで選択する女性がもう少し多くてもいいとは思います。

というのは、日本だと一歩下がってわきまえた態度をとった方が、周りから「いい人」という評価になりやすい。すぐに「私が、私が」というより、ちょっと呼吸を置いてから話すのがいいと教育されてきた。

そういう環境にいると、仕事でも最初は謙遜して「私なんて」と言うようになって、それがだんだん染みついてくる。最初は演技だったのが、いつの間にか演技ではなくなっている。

なぜなら、意外とそういう態度をとっていたほうが「楽」なんですよ。風に当たらないから。

――風にあたるのはつらいです。自由に選択してよいとなったらその道を選ぶ人は少なくなりませんか。

伊藤:でもね、マネジメントの側にいないとできないこともあるんだよ、と私は言いたいな。どんなに優秀な人でも自分ひとりでやれることは限界があります。ならば自分で決められる範囲を広げるしかない。自分と思える範囲を広げるためには、全体を見ることが求められます。

 もし、メインテーブルに就ける機会があったら、入口でシャッターガラガラはもったいないです。

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――伊藤さんがいたような大きな組織のマネジメントは想像がつきません。すぐにできるようになるのでしょうか。

伊藤:すぐにはできないですよ。一定の訓練は必要です。大組織はみんなそうでしょうが、小さいグループをまとめるといった役回りを経てステップバイステップで身に付けていきます。

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