私は、国交省の中の小さい組織の人事を担当したことが、とても勉強になりました。人の動き方とか他の組織との関係の理解が進みました。
ただ人ゴトというのは本当に難しい。先輩からはこんなことを言われました。
「みんなを幸せにすると思うな。人事にできることは人の不幸の度合いを同じくらいにするしかできないんだから、傲慢になっちゃいけない」
マイナスをゼロにするのはわかりやすくて、関係者の意見は一致しやすい。例えば「悪い町」の具体像は、治安が悪いとかインフラが整っていないとかイメージしやすい。それでもやるのは大変です。ましてや、「いい町」は? 幸せはひとそれぞれで、一律に決められないですよね。人財も無尽蔵ではないですから難しいです。
――まさに金言ですね。そうしたこれまでの経験から、伊藤さんが人と付き合うときに大事にしていることを教えてください。
伊藤:私は基本、おせっかいなんでしょうね。相談されると余分に踏み込みがちです。いったん相手の言うことを飲み込むのは、けっこうしんどい。けど、いろいろ勉強になっておもしろい。
例えば、20代に、とある自治体のシンポジウムにスピーカーとして招かれました。女性がまだ珍しかったからでしょうね。「住みよい県にするために」という壮大なテーマで、若かった私は何を話していいかわからず、必死に用意したのを覚えています。結局、何を話したかも覚えていないけれども、日頃おつきあいいただけない人に会えて、すごく鍛えられた。他流試合もためらわない方がいいと思います。