――考え方が変わったきっかけ、もしくは伊藤さんに影響を与えたことはなんでしょうか。
伊藤:仕事の上では、市役所や内閣官房など他の組織に出向して、それまでと異なるやり方や考え方に触れたことですが、個人的に一番大きかったのは、2番目の子どもの障害がわかったこと。そのことは仕事には直接は関係がないので、取材を受ける機会があっても、これまであまり言わないようにしていました。
自分がどう変わったかは正直わかりません。衝撃を受けて変わるというような、右が左に方向転換とかいうのではなく、人生が深くなるという感じでしょうか。それもじわじわとですね。
障害がある子がいることで、地球の中心に近づくというか、地球の中心に自分を結びつけてくれているような気はします。人間を謙虚にさせてくれます。人が生きているって本当にすごいことなので。
でも、深刻に受け止められると、それはそれで違うかな。子どもは私に似てかわいいんです。親ばかですが、密かにそれは自慢に思っています。もちろん、「私に似て」は冗談ですよ(笑)。
それに、世の中、着実に進んでいます。車いすで出かけるのは、以前はバリアがあって気持ちがくじけましたが、今は相当よくなっている。いい方向に向かってます。
「私なんて」は実は楽 風に当たっても自分決めたい
――女性とマネジメントはよく語られるテーマです。現場が好き、仕事の楽しさは現場だと考える、管理職になるのを避ける女性は少なくありません。誰もが管理職を目指すべきだと思いますか?
伊藤:メインテーブルについたからといって自分の思う方向性に変えられるワケではないけれど、後ろでわいわい言っているよりも変えられるかもしれません。私自身は、組織が進んでいく方向や方針を決められる側にいたいと思いました。
管理職になったのは、出世したい、偉くなりたいという気持ちからではなく、決められる自分でいたいから。