「こうした弱い個人の権利が守られない状態は憲法に反します」
清末さんは憲法24条2項を示して指摘する。
「憲法24条2項は個人の尊厳を定めています。どのような立場に置かれた人も尊厳を守られなくてはならないという意味です。近代市民法は自分の立場を主張することのできる強い個人を目指してきましたが、この24条2項に立てば、孤立出産や流産をした、複合的な差別の下にある人たちの尊厳を守らなくてはならないのは明らかです」
自分で決められる権利
他方、前出の石黒さんは裁判の過程で女性の権利の保障について考えたという。
「産む産まないを含めて性と妊娠・出産について、女性は自分で決めることができる。それは立場によらず、どの人も持っている自己決定の権利であるということを、社会が意識として強めるべき。その土台があって初めて、孤立出産女性に対して加罰から保護へ、認識の変化が醸成されていくはずです」
なお、逆転無罪を勝ち取った石黒さんらの弁護団は、「孤立出産状況下における母親の行動は不可罰にするべき」との憲法学者・木下昌彦神戸大学大学院教授の意見書を最高裁に提出している。(ジャーナリスト・三宅玲子)
※AERA 2024年6月17日号