コロナ禍、高齢化、スマホの普及などを背景に、医師と患者の関係にも変化が生じているようだ。それでもやはり「溝」があり、双方ともイライラ、モヤモヤを抱いている。少しでもギャップを埋める道はあるのか。AERA 2024年6月17日号より。
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AERAは5月、医師向け情報サイト「MedPeer(メドピア)」の協力を得て、医師約700人にアンケートを取った。
「仕事の効率化や医療の提供のために、患者への対応で苦慮しているか」と尋ねたところ、「苦慮している」と答えたのは、40.3%だった。
医師がどんなことに苦慮しているかを知り、改善できれば、医師も患者もお互いにとっていいだろう。それに患者だって、医師に言いたいことはあるはず。どうすれば患者と医師の溝を埋められるのか。
スマホが普及して、医療についての情報を手軽に調べられるようになった。英語の論文を自動翻訳することだってできる。
心臓外科医の南淵(なぶち)明宏医師(昭和大学教授、66)は言う。
「コロナ禍を経て、一般の人の医療リテラシーは上がっていると思います。ネットで医療情報を調べるようになりました。ワクチンを打つべきか、打たなくていいんじゃないかとか調べて考えるようになりました。一つの情報だけを見て、早合点する人は減ってきている印象です。正しい流れだと思います」
何度も何度も説明
だが、アンケートで目立ったのは、患者への説明に時間がかかることだ。
「何度説明しても理解してくれない」(血液内科、30代、女性)
「説明しても理解してくれず、説明時間を何度も何度もとることになる」(耳鼻咽喉科、30代、女性)
なぜ時間がかかるのか。
南淵医師が、患者と面談したとき「ネットにこう書いてありましたよ」と言われることがある。こんな会話が続く。
「それを誰が書いているんですか?」
「いや、論文です」
「それは査読されているんですか?」
南淵医師は取材に話す。