こども家庭庁が発足し、あいさつする岸田文雄首相(23年4月)

形ばかりの子育て支援策

 人口が減少を続ければ、労働力人口が減り、成長率が下がり、税収も下がり、年金などを支える人口も減り、消費が減少し、社会全体の需要減が成長率低下に拍車をかけ、財政赤字が拡大し、国債発行が増え、円の信認が下がって円安が進み、輸入物価は上昇し、賃金は上がらず、国民生活は貧しくなり、いずれは経済が破綻する可能性が高くなる。ということが予想できる。

 人口減少を止めるには、子供の数を増やすか、海外からの移民を増やすか。どちらか、あるいはその両方を進めなければならない。これは自明のことだ。

 政府ももちろん、そんなことはよくわかっている。

 そこで、岸田文雄政権は、子育て支援策を推進すると言って、23年4月にこども家庭庁を設置した。ただし、これによって何かが大きく変わったということはなく、子ども関連の政策のうち、内閣府や厚労省が担ってきた事務を一元化するというものにとどまり、文部科学省などの子ども関連政策の統合は同省などの反対でできなかった。これだけではほとんど意味がないものだったのだ。

 厚労省の人口動態統計が発表されたのと同じ6月5日には、子育て支援のための実質的な政策を進めるために、子ども・子育て支援法の改正法が成立した。その内容の紹介は省略するが、子育て世帯への様々な給付の拡大が実施される。現金給付のほか、働いていなくても保育園を利用できるというようなサービスの拡大も含まれていることが喧伝されている。

 しかし、子育て世代の若者からは、この程度の給付では不十分だという批判があり、専門家からもこれで出生率が上がることは期待できないという声が大半だ。

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子どもを持とうと思わない「環境」