子供を持つべきという男女が大幅に減少
実質賃金が下がり続けていてはとても子どもを持とうという気持ちになれないだろうし、働き方改革や女性活躍の環境整備も中途半端なままだ。学校教育の費用や過剰な受験戦争も重い負担となっている。さらに社会保障を含めた将来不安、戦争準備が進み徴兵制が導入されるのではないかという不安など、障害を挙げれば限りがない。
そうした負担や不安を取り除いたとしても、そもそも結婚したくないとか子供を持ちたいとは思わないという人も増えている。
21年の出生動向基本調査によると「いずれ結婚するつもり」と答えた未婚者の割合は15年調査と比べ男女ともに5ポイントほど減少した。「結婚したら子どもを持つべき」と答えた人も男性で20.4ポイント、女性では30.8ポイントも減っている。
古くからあった、「人は、いつかは結婚し、子どもを産み育てるものだ」という固定観念は崩壊していると見るべきだろう。
もちろん、結婚したい、子どもが欲しいという人たちのためにその障害を取り除き、支援策を講じることは必要だが、それだけでは、出生率を大きく上げるところまでは行かないのが現実なのだ。
子どもを産み育てるかどうかは、もちろん、個人の選択の問題である。したがって、政策的に子どもを産み育てる障害を全て取り払っても子どもが減り続けるのであれば、それは個人の自由な選択の結果だから、決して悪いことではないと考えて受け入れるべきなのかもしれない。
その場合は、人口減少を前提とした社会の維持を考えるということになるが、これは極めて難しい課題だ。というのは、例えば介護一つだけを取ってみても、目の前で団塊の世代が後期高齢者になっていき、大量の介護難民の発生、老老介護、介護離職、さらにはヤングケアラーなどの問題が深刻化して、経済社会が回らなくなるのではと危惧されている。