厚生労働省のカスハラ対策啓発ポスター(ホームページから)
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 顧客からの嫌がらせや理不尽な要求などのカスタマーハラスメント(カスハラ)について、大手企業などが対応方針を策定したり、自治体でカスハラ防止に向けた条例を制定したりする動きが広がっている。日本の社会が抱え続けてきた「お客さまは神様」意識の増長。開いた口がふさがらないほどの悪質な行為も少なくないが、そもそも、カスハラを働くのはどんな人物なのか。誰もが加害者になるリスクを抱えているのか。

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 長年、エスカレートし続けてきた顧客によるカスハラ行為。最近になり東京電力やJR西日本などの大手企業がカスハラへの対応方針を策定。自治体では東京都や北海道で、全国初となるカスハラ防止条例制定の動きが進んでいる。

 対応方針も、より具体的だ。JR西日本はカスハラの「行為類型」と、その具体例を明示した。

サービス提供の停止や法的措置も

 一部を抜粋すると、

▽暴力的行為、セクハラ・差別的発言 

▽SNSなどへの暴露をほのめかした脅し

▽従業員の無断撮影 

▽要求の過度な繰り返し

 などの行為をカスハラの具体例に挙げ、サービス提供の停止や法的措置を含めた厳しい対応を取るとしている。

 また、社内に向けても、カスハラが発生したときにどう対応するかの体制を整備するとした。現場任せから脱却し、組織として従業員を守る姿勢を強めた形だ。

 企業や官公庁でカスハラ対応を含むクレーム対応などの研修を行ってきた「日本アンガーマネジメント協会」の戸田久実・代表理事は、

「2020年の通称『パワハラ防止法』の施行に続き、ここにきてやっとカスハラ対策も進み始めたという印象です」

 と率直な思いを口にする。

 戸田さんは企業のコールセンターで働く人や接客業のスタッフ、窓口対応の公務員らから、生々しいカスハラの相談を受けてきた。

▽「バカ」「殺すぞ」「火をつけてやる」「今からそっちに行ってやる」などと怒鳴ったり、なじったりする

▽蹴ったり胸ぐらをつかんだり、物を投げたりする

 といった、場合によっては警察に任せるべき暴言、暴力型。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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