人は、自分のことを好きな人に弱い

 これは別に、キリスト教的に敵も愛しなさいとか、自分を嫌いな隣人でも愛しなさいみたいな高尚な思想を下敷きにしているわけでもなければ、卑屈になって下手に出ているわけでもありません。ただ人は、自分に極端に懐いてくる人、自分に憧れていそうな人、自分のことをめっちゃ好きそうな人には弱いものです。私なんかチョロいので、たとえ死ぬほど嫉妬するような美貌と才能を持ついけ好かない後輩がいたとしても、「ファンです」とか「学生時代から鈴木さんの本読んでます」とか言われたら二秒で大好きになります。

 そのお姉さん二人がどんな理由で急に態度が変わったのか、気に入っていた男性があなたのことを好きだとかそういう恋愛系のことなのか、何かあなたが言ったことやSNSの投稿などが気に障ったのか、それはよくわかりません。聞いてもなかなか教えてくれないでしょうが、正当な理由があって怒っている時には人は根も葉もない噂とかはたてませんから、きっとくだらない嫉妬心とかイライラとかそういうものが理由だと思います。そんな理由で嫌がらせをしている人に慈悲の心を持つ必要はないのですが、自分が快適に暮らすためにここはひとつ、敵と寝る戦法はいかがですか。人は束になると嫌悪感や嗜虐心を増幅させますから、二人いっぺんではなくどちらか一方ずつターゲットを絞って思いっきり近づいてみると、彼女たちの不安や闇も見えてくるかもしれません。

著者プロフィールを見る
鈴木涼美

鈴木涼美

1983年、東京都生まれ。慶應義塾大学在学中にAV女優としてデビューし、キャバクラなどで働きつつ、東京大学大学院修士課程を修了。日本経済新聞社で5年半勤務した後、フリーの文筆家に転身。恋愛コラムやエッセイなど活躍の幅を広げる中、小説第一作の『ギフテッド』、第二作の『グレイスレス』は、芥川賞候補に選出された。著書に、『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』『非・絶滅男女図鑑 男はホントに話を聞かないし、女も頑固に地図は読まない』など。近著は、源氏物語を題材にした小説『YUKARI』

鈴木涼美の記事一覧はこちら
暮らしとモノ班 for promotion
疲れた脚・足をおうちで手軽に癒す!Amazonの人気フットマッサージャーランキング