食品ロス削減のため、コンビニでも値引きを行う店が増加。ローソンではAIを活用して値引き額やタイミングを決めるシステムも順次導入(写真:ローソン提供)

「運送業者は二言目には『荷主次第』と言います。荷主の依頼があれば、どんな悪条件でも対応するのが使命だというマインドセットになっています」

 災害級の大雪や大雨で立ち往生したトラックが高速道路や国道で数珠つなぎになる光景が繰り返されるのは、その典型だという。輸送ルートが通行不能になるのが分かっていても、運送業者の側から配送を断ることはできない。こうした業界の力関係と、それを支える不合理なマインドセット。その背後には消費者の存在がある。

「日本の消費者はあまりにも要求水準が高い。それが過剰サービスにつながり、物流システム全体を圧迫しています」(井村さん)

見えにくい物流コスト

 コンビニの24時間営業も、野菜の形や大きさが均一なのも、スーパーの陳列棚に常に隙間なく商品が並んでいるのも当たり前……。「これらは日本以外の国ではすべて当たり前ではありません」と井村さん。

「働き手が少なくなる日本で、こうしたサービスは今のコストでは持続可能ではないことに、日本人も気づき始めています」

 ただ、「物流のコスト」は消費者には見えにくいのも事実だ。例えば、通販でよく見られる「送料無料」の表示。実際には、メーカーや売り主が負担しているにもかかわらず誤解を招くという面にとどまらず、物流が提供するサービスの価値を侮る意識を消費者に刷り込んでしまう「効果」も否めない。

 国は2024年問題への対策として、「物流の効率化」「荷主・消費者の行動変容」「商慣行の見直し」の3点を掲げ、法整備を進めている。このうち最も難しいのが、「消費者の行動変容」だといわれる。表で消費者が意識したい買い物のコツを紹介しているが、こうした行動変容の広がりが、「物流問題の解決には必要なことです」と井村さんは唱える。

「サプライチェーンの川下に位置する消費者の意識や行動が変われば、それに対応する形で荷主やメーカーなどの川上に波及してサプライチェーン全体が最適化し、持続可能な社会に近づきます」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2024年6月10日号より抜粋

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