今年の春から一部の宅配便が値上げされたり、荷物が届くのが遅くなったりしています。私たちのもとに商品を届ける「物流業界」に何が起こっているのでしょう? 小中学生向けニュース誌「ジュニアエラ」(朝日新聞出版)7月号から、ジャーナリストの一色清さんが詳しく解説します。

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 暗くなってから宅配便が届くことがあり、「こんな時間まで仕事をしてご苦労さま」と頭を下げたくなる。きっと遅くまで働かないと、その日のぶんを配り終えることができないのだろう。

 長い時間働いているのは、宅配便を配達するドライバーだけではない。長距離を運転する大型トラックのドライバーは、長い距離を何日もかけて夜通しで運転したり、倉庫の前で長時間待機させられたりすることがよくあるそうだ。

 背景には、ネット通販の利用が増えるなど物流が活発になっているのに、ドライバーはそれほど増えていないことがある。調べると、ドライバーの労働時間は全産業の平均より2割ほど長く、平均年齢も高く、仕事が原因で体を壊す人が多いという。

 このため、トラックドライバーについて働きすぎを防ぐ新しいルールが2024年4月から適用されることになっている。ただ、このルールが適用されるとドライバーが足りなくなるといわれている。それが物流の「2024年問題」だ。

 野村総合研究所は「2024年問題」により、30年に予測される国内の荷物量の35%が運べなくなるという推計を発表している(上のグラフ)。地域別では、東北や四国などが深刻で、一部の地域では離島のように配送料が高くなる可能性があると指摘している。

 影響はすでに出始めている。ヤマト運輸は6月1日から関東と中国・四国の間などの一部地域の宅配便(ヤマト運輸の名称は宅急便)の配達日を「翌日」から「翌々日」に変える。

 また、ヤマト運輸と佐川急便は4月から宅配便の一部の値上げを実施している。日本郵便(ゆうパック)も今秋に値上げすることを明らかにしている。

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一色清
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NEXTコンビニやスーパーも物流の効率化に取り組む
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