中村、大倉、金融庁など当局対応を担う調査部長(執行役員)の渡邉健司の3人がこれまでの経緯を説明。報告を受けたのは白川のほかに、副社長の飯豊聡、営業企画部長(執行役員)の重定祐輝だった。BM酒々井店の板金工が託した不正の証拠写真や聞き取りメモも共有された。

「東京海上、三井住友海上は、BMの工場のうち1件でも疑義がある工場については入庫紹介を停止する方針です」。渡邉が他社の状況も伝えた。
 

当初は正しい判断だった

 このときの白川の判断は適切だった。

「事態を重く受け止め、厳正な対処をしてほしい」

 すると入庫誘導の停止に消極的だった幹部らの雰囲気は一変。その後、損保ジャパンはBMへの対応で他の2社と歩調を合わせるようになる。

ちなみに渡邉率いる調査部は、おそくとも5月11日までに、ほかの2社が各社長に対しBMの不正請求疑惑を報告していることを把握。保サ企部とともに、白川への報告の必要性を認識していたにもかかわらず、結果的に上げていなかった。
 

薄氷を踏む協調行動

 BM対応で消極的な姿勢をとっていた損保ジャパンは、トップの白川が知るところとなり一転、他の2社と協調路線に乗ることとなった。2社にとって、損保ジャパンが離脱するケースをメインシナリオとし、それでも入庫誘導をやめる調整に動いていた矢先だった。

 2022年6月7日午前、東京海上が先陣を切ってBMのBP部門担当の取締役と面談した。

「入庫を停止する。兼重社長に会いたい。第三者の目線を入れた工場の調査もお願いしたい」

 東京海上の担当幹部が「3社合意」を伝えた。すると、取締役は「見逃した保険会社にも責任があるのではないか」と激高した。結局、面談は途中で打ち切りに。その日の午後に予定された他の社の面談も「どうせ同じ話だから」とキャンセルになってしまった。

 損保ジャパンと三井住友海上は仕方がなくその夜、取締役の部下であるBP部長にメールで方針を伝えている。

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調査の透明性に危惧