「ブチ切れ事件」について、大手損保幹部は各社をおびえさせ交渉を有利に進める「はったり」だったと推測する。実際、3社が揺るがないとみたのか、翌日には自主調査を了承している。ただ「6月末まで1カ月もない」とし、今回の自主調査は関東にある4工場に限るとした。

 BMのドン、宏行との面会アポも入った。宏行は、損保の前にはめったに姿を見せないことで知られていた。面会は6月27日。調査拡大をどう求めるか、入庫誘導の再開を求めてきたらどうするか……。さまざまな課題を事前に整理しておかなければならなかった。

 すでに懸念もあった。4工場への自主調査については、BMのBP部長の提案で、損保ジャパンと三井住友海上の出向者が調査にあたることとされたからだ。3社の打ち合わせでは、東京海上と三井住友海上の2社が調査の透明性を危惧した。東京海上にいたっては6月10日の時点ですでにこんな言葉を漏らしている。

「第三者による客観的な視点を入れないと、BM側に隠蔽や改ざんされてしまうのでは—」

(文中敬称略。肩書は当時のもの)

※この問題の全容については『損保の闇 生保の裏』に記載しています。顛末については同書をご参照ください。記事は一部抜粋です。

著者プロフィールを見る
柴田秀並

柴田秀並

しばた・しゅうへい/1987年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。2011年、朝日新聞に入社し、現在は経済部記者。金融担当が長く、かんぽ生命保険の不正募集などを取材。社会部調査報道班に在籍中は国土交通省の統計不正や同省OBによる人事介入問題の取材にも携わった。著書に『生命保険の不都合な真実』(光文社新書)、『かんぽ崩壊』(共著、朝日新書)がある。

柴田秀並の記事一覧はこちら
暮らしとモノ班 for promotion
50%オフは当たり前!?中には70%オフのアイテムも!Amazonの在庫処分セールで掘り出し物みっけ♪