映画祭のジェネラル・プロデューサーで、アニメプロデュース専門の製作会社ジェンコ代表の真木太郎さんが説明する。
「アニメ業界では作画を中心に慢性的な人手不足に悩まされています。かつ地方のアニメ専門学校からも人材を確保しようとする動きが盛んです。ただ、依然としてアニメ制作会社の大半は東京にあり、地方の学生と業界とのマッチング機会の少なさ、例えば優秀な人材を青田買いできる場もないことなどが課題となっています」
一方、近年ではアニメスタジオを地方移転させる動きも進んでいる。アニメ制作のデジタル化が進んだことで、データでのやり取りだけでも制作が可能になり、場所の制約が緩くなったためだ。その先駆者といえば、京都府宇治市に本社を置く京都アニメーションだろう。制作会社が地方の新たな雇用創出にもつながっている側面がある。
例に漏れず、新潟市にも、「新潟アニメーション」という14年設立の制作会社がある。内田昌幸社長が期待を寄せる。
「アニメ業界志望だけど地元で働き続けたい学生や、東京で一度就職したけれど、新潟に戻ってきたい人材の受け皿になればという思いで会社を立ち上げました。映画祭が認知度向上や人材獲得のきっかけになればいいなと思います」
映画祭が産業育成に果たそうとする意気込みは大きい。そのためには1回きりの開催ではなく、すぐには収益化できなくても継続的な取り組みが必要だ。
前出の真木さんがこう話す。
「映画祭のようなイベントはすぐに黒字化できるものではありません。来年以降も継続的に続けることで、映像業界や市民の方々など、各方面の認知度をあげていくことが必要不可欠です」
映画祭の期間中、新潟市中心部の古町界隈には至る所にタペストリーが掲げられ、街を挙げて盛り上げようとしていた。だが、一般市民への認知度はこれからといった感じ。筆者が知るアニメ業界の人間に聞いても、映画祭はあまり浸透していなかった。準備期間が短く、スケジュールが直前まで固められなかった。告知が足りなかった影響も大きいだろう。だが、この経験を生かして、来年以降は大きく改善できるはずだ。
こうした地方創生イベントは、地元がいかに一致団結できるかが大きい。そこが最初からクリアできているのは、これ以上ない強みだ。映画祭が新潟の新たな顔となることは間違いない。(河嶌太郎)
※週刊朝日 2023年4月14日号