映画祭の実行委員長を務めた、映画プロデューサーで開志専門職大学アニメ・マンガ学部教授の堀越謙三さんは、背景をこう話す。
「2021年12月に新潟で映画祭をやろうという構想を思いつき、22年に入って市役所に企画を持っていったのが始まりです。元々、新潟市はマンガやアニメによるPRに力を入れていたのもあり、急ピッチで準備を進めることができました」
新潟市は、赤塚不二夫や高橋留美子ら多くの漫画家を輩出してきた。12年からは「新潟市マンガ・アニメを活用したまちづくり構想」という計画を進め、「新潟市マンガ・アニメ情報館」や「新潟市マンガの家」といった専門の文化施設も複数ある。こうした土壌があったおかげで、1年弱という短期間で映画祭が実現できた。
堀越さんが言う。
「新潟には明確なアニメの『聖地』など、“目玉”になるものがこれまでなかったのも急ピッチで進められた要因かもしれません。映画祭を通じて、新潟から作家やクリエーターを育てていきたいですね」
新潟市ではマンガやアニメに関わる人材育成にも力を入れている。
堀越さんが教壇に立つ開志専門職大学は、20年に新潟市に開校した私立の学校だ。21年に設置したアニメ・マンガ学部だけでも、100人以上が学ぶ。他にもアニメやマンガ、ゲーム関係の専門学校が複数あり、県内だけでなく北陸や東北からも学生を集める。
映画祭も新潟という地方における人材育成の狙いがある。
■評論だけでなく人材育成の場に
会場の一つとなった開志専門職大学でも、地方とアニメの現状と未来について考察するシンポジウムや、複数のフォーラムが開かれた。また、アニメ業界を志望する学生を全国から集めた「マスタークラス」を開き、押井監督や「この世界の片隅に」の片渕須直監督らが講義をした。
映画祭を評論の空間だけでなく、人材育成の場にもすることで、アニメ業界が抱える問題の解決にもつながるという。