「ヴァンパイア~」は唯一の日本作品だ。牧原監督が言う。
「元の作品がNetflixの限定配信だったので、より広くいろんな人に見てもらいたい思いから、『劇場版』として再編集して映画祭に出すことにしました」
グランプリに選ばれたのは、村上春樹の短編を原作にした「めくらやなぎと眠る女」(ピエール・フォルデ監督、フランス・カナダ・オランダ・ルクセンブルク合作)。東日本大震災直後の東京を舞台に、地震の幻影に囚われたキョウコ、コムラ、カタギリの3人が、記憶と夢と幻想の世界で、本当の自分を再発見するストーリーだ。
■マンガやアニメ育てる土壌
作品の新規性が評価された「傾奇(かぶく)賞」には「カムサ─忘却の井戸」(ヴィノム監督、アルジェリア)、独自の制作手法を評価する「境界賞」には「四つの悪夢」(ロスト監督、オランダ・フランス合作)がそれぞれ選ばれた。「ヴァンパイア~」は奨励賞を受賞した。
押井氏は「アニメの表現は、本来からして多様なものです。どれも大変素晴らしい作品が集まりとてもうれしく思います。第1回の映画祭にふさわしい、かなり画期的な賞になったのではないでしょうか」と語った。
映画祭では、近年の話題作も評価の対象とした。制作会社やスタッフを顕彰する「大川=蕗谷(ふきや)賞」には、20年に日本の歴代興行収入記録を塗り替えた「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」で撮影監督を務めた寺尾優一さんや、世界でヒット中の「THE FIRST SLAM DUNK」でCGアニメを手掛けた東映アニメーションとダンデライオンアニメーションスタジオ、「劇場版 呪術廻戦0」を制作したMAPPAなどが選ばれ、作品の上映も行われた。
作品そのものだけでなく、こうしたアニメ業界を支える人たちを表彰する“仕掛け”がうまく回ってゆけば、産業としてのアニメがますます発展してゆくだろう。
それにしても、なぜ新潟なのか?