新潟市で世界のアニメ業界が注目する映画祭が開かれた。アニメを地場産業や教育の軸の一つにしようという取り組みだ。押井守監督ら映画祭のキーパーソンに狙いを聞いた。
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押井守、大友克洋、新海誠……。日本が誇るアニメ界の巨匠の作品や、世界の話題作がこの春、新潟市に集結した。3月17~22日に開かれた「新潟国際アニメーション映画祭」は、長編アニメ作品だけを扱う世界初の映画祭として産声を上げた。これから毎年、新潟で開催してゆくという。
メインイベントの一つは、世界各国から出品されたアニメ映画から優秀作品を選ぶコンペティションだ。制作コストがかかる40分以上の作品に限定し、商業映画として通じるものだけを審査する。これまでのアニメ映画祭は短編が多く、アート系で知名度の低い作品が中心だったという。
なぜ長編に特化したのか。その理由について、審査委員長を務める押井監督が語る。
「実は商業作品を扱うアニメ映画祭というのはこれまでほとんどなく、フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭くらいしかなかったんです。これまで短編アニメの映画祭の審査員も務めたこともありましたが、長編に限ったことで予想以上に質の高い、誰もが楽しめる作品が世界中から集まりました。こうした作品が映画祭で批評の場に立ったことはこれまであまりなかったので、映画祭としても新しい試みだといえます」
日本のアニメは世界中でヒットを飛ばしているが、こうした映画祭で審査員の評価を受ける場は、国内ではほとんどなかったのが実情だ。作品の評価といえば、興行収入などの数値的な面に偏っていた。小説はもちろん、マンガやゲームにも批評家が大勢いて、“評価軸”も定まっているのに対して、アニメの場合は必ずしも、そうした見方がなかったのだ。
コンペティションには、ヴァンパイアと人類の共存をテーマにした話題作、劇場版「ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン」(牧原亮太郎監督)をはじめ、アルジェリアやオランダ、フランス、米国などから計10作品が選ばれた。