ちなみに、トイレに行くときに使えるのが、ヘッドライト。懐中電灯は片手がふさがるし、置き場所がないこともある。

 東日本大震災の時、柳原さんは、避難所で男性が生理用品を1人に1個配っていたと聞いた。

「1個ではどう考えても足りませんし、配っているのが男性だともらいづらいですよね。自分で準備しなきゃと思いました」

 これからの季節は蒸れに悩まされる。下着の交換ができなくても、おりものシートが使える。

 避難所は人でいっぱいで入れないこともあるし、安全そうなら自宅にとどまる選択肢もある。柳原さんは、地震の時は、在宅避難にしたという。

「防災リュックに入れる物だけが、防災グッズではありません」

 と柳原さん。例えば石油ストーブは停電中も使えて重宝したという。また、いつも食べる食材は、ローリングストック(買い置き)しておくといい。柳原さんはそのまま食べられて元気が出る食料を買い置きしているといい、菓子や野菜ジュースのほか、子どもに「元気出して」と手書きしてもらった缶詰も備えている。

 寝床にはホイッスルと靴を。

「熊本地震の時は、ホイッスルなどの備蓄品を見せて『大丈夫だよ』と伝えました。備えていることが、子どもの安心につながります」

玄関にガラスも要注意

 防災グッズをそろえるのはハードルが高い。そんな場合も、お金をかけない「0円防災」ができる。家具は固定するか耐震マットを敷いた方がいいが、対策していない場合は、家具が倒れる場所で寝ないようにする、食器棚の扉をひもなどで留めて、食器が飛び出すのを防ぐなどでも被害は最小限に抑えられる。玄関に置きがちなガラス小物も要注意。割れたガラスが靴の中に入ったら逃げられない。

 通勤中は危険な場所、役立つ物を探す「防災散歩」をしよう。危ない側溝、公衆電話の場所、給水場所などを確認しておく。

「ゆるくでいいので、人づき合いをするのも大切です。情報が入って、助け合うこともできるかもしれません。人間力が防災力を高めます」

(編集部・井上有紀子)

AERA 2024年5月20日号

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